先日、ようやくニセコ町のニセコ駅前に用事で行く事ができたので、静態保存されている、大正時代の名機9600形、9643を見てきました。
北海道で9600(キューロク)が初めて使われたのは、このニセコ駅がある函館本線、山線(小樽~長万部間)で、9600型は、ニセコ町ゆかりの深い形式です。
ニセコ倉庫群の隣に9643はあります。しかし残念ながら、この日は前面煙室扉にはブルーシートがかけられ、さらには周囲にロープが張られており、立ち入りが出来ない様子でした。仕方なくロープの外から望遠でいくつか写真を撮ってきました。
9643は、当初は国鉄機でしたが、晩年を私鉄で過ごしていますので蒸気末期にほとんどの国鉄機が装備していたATS発電機が付いていません。また、配管・配線類なども晩年まで国鉄で過ごした9600型よりも9643の方がシンプルでスマートな印象です。
9643は、1914年12月 川崎造船所兵庫工場にて新製された9600で、新製後は国鉄の神戸局に配置されたようです。その後三重県の亀山機関区を経て、1937年3月、北海道に渡り、旭川機関区に移動・活躍ののち、国鉄機としては1948年6月に廃車となりました。
しかし、その後、国鉄から日曹炭鉱天塩鉱業所に譲渡され、宗谷本線、豊富にあった日曹炭鉱の天塩鉱業所専用鉄道にて使用されました。1972年7月の天塩鉱山閉山後の9月に路線廃線とともに、9643も廃車となりました。
1973年12月からは、サッポロビール園にて静態保存されていましたが、2017年6月、鉄道模型の「IMON」の代表である井門義博氏により、ニセコ駅隣接の町有地に移設され、2019年に上屋根付きの保存用の建屋が設置されて正式に公開されました。
9643がサッポロビール園にあったころ、一度見たことがありましたが、その頃は露天での保存でしたので、あまり保存状態は良くなかったように記憶しています。(昔写真を撮ったはずなのですが、データが見当たらず。)
移設に際して塗装もしているようでとても綺麗です。また、専用の上屋根付き建屋で大事に保存されているので、保存形態としては非常に良好です。汽笛吹鳴や前照灯の点灯も可能のようです。9643の横にはかつてC62 3の動態復活運転の際に新得から移設され使われていた旧新得機関区の転車台もあります。こちらもちゃんと塗装をしていて素晴らしい状態になっています。
ニセコ町には鉄道文化協会という組織があるそうなので、今後の保存状態もきっと良い状態を継続できるのではないでしょうか。
一方、隣町の倶知安には倶知安で活躍していた2つ目の9600型(79615)があり、また倶知安機関区のゆかりの転車台もあるのですが、かなり保存状態(というか扱い)が悪く、ボロボロな状態です。
転車台も新幹線の工事とともに撤去されると思われます。かつて地域の鉄道の拠点として栄えた倶知安町も、これらの町の交通の重要な遺産を大事に後世に伝えてくれれば良いのですが、もう手遅れな状態なのでしょうか。
ニセコ駅は静かでした。かつては賑わっていた山線も数時間に1本の列車がある程度。新幹線が出来たら、在来線は廃止になりそうな気配。古き趣あるものは新しく便利なものに置き換えられる。時代の流れなのでしょうけど。